takuyo日記

小説に毒されています

トライアローグとトライ犬

トライアローグ展でベーコンをみた。もちろんベーコン以外もみたけどベーコンの印象が強すぎて、ベーコンをみた、という感じだった。

一緒にいた人は少し調子が悪くて、疲れてそうで心配だったけど、ちゃんと笑ったりおいしいものを食べたりできたのでよかった。

ベーコンは他の絵と違って、目に入れたときの反応状態が別のものに近い。みたときに「絵だな」とあまり思わず、小さい変な生き物(『ファンタスティックビースト』に出てくるみたいな)が慌てて人間の姿に変身する、まさにその瞬間を目撃してしまったような感じがする。事件ぽさ。すでに起こっていたなにかにたまたま遭遇しているという感じ。みるというより、巻き込まれている。

文学に近いというのは勘違いかもしれないが、“読むべきもの”という感じはする。なにかを身体が読もうとするのがわかるし、みたときにすでに読んでいる。それは絵の「中」にはなく、かといって俺自身の心的な動きに還元されるようなものでもないもの。いきものの痕跡。ひとの一部な感じ。床に落ちた靴下だとか、食べ残しだとか、触れていた手が離れた後に残る感触だとか、そういうもの。あるいは顔。表情、とかに分類できない動き。なにかの痕跡でありながら、それ自体つねに新しいもの。

外には三匹の犬がいて、バトっていた。というかバトりつつあった。俺らがみたときにはもう敵対していたのか敵対しつつある様を俺らがみていたのか、もう忘れた。一対二だった。一の方はたしか茶色っぽい小型犬で、二の方はふたごの白いモコモコ犬だった。あの顔。ボンボンみたいな頭がふたつ目一杯おなじ角度に傾いて、リードを引っ張って徐々に徐々に小型犬の方に接近していた。小さな黒い目をかっ開きながら、「あ? こっちふたりやぞ? あ?」みたいな顔だった。あの、顔。俺らは手をつなぎながら、その前線を歩いていった。あいつら、あはは、とか声を撒き散らしながら。そのとき俺はたぶんいろいろと忘れていて、ふと隣をみた。あの顔。