takuyo日記

小説に毒されています

巨大レンズ

太りはじめてずいぶんと経つ。筋トレをしなくなった、酒の量が増えた、深夜に訪れた空腹をジャンクフードで迎え撃つことをはばからなくなった、などなど、その原因は明らかなのだが、やはり大本にはストレスがあるのだろう。僕はいまストレスを感じている。世の中に。というのは半分は本当、半分は嘘で、実際いまの世の中の閉塞感に鬱々とした気分にはなっているのだが、「ストレスのせいで太っている」という言い方には嘘臭さを感じてしまう。たぶんいまの僕はそれほど受動的ではない。なにか虚焦点に高熱を集める巨大なレンズみたいにして前屈みにじっとしている。小説をいつも書いている。つまりぜんぜん筆が乗っていないのだが、それでもいつか言葉になるであろう純粋な推進力のようなものがずっと回転している。僕はそれで満ちて、糞詰まりのようになっている。僕はその回転に服従して生きている。その回転が油臭い飯を食らえと言うなら深夜でも喉を汚すし、酒を飲んで正体を失くせと言うならすっかり晴れた午前中でも意識を投げ捨てる。その結果がこの塊だ。肉の塊。まごうことなき物質だ。精神の運動が物質に変換されて身体にこびりついている。そしてそのイライラを燃料にキーボードを叩きまくる。この循環だけが、いまの世界で唯一正しい暴力のような気がしてぜんぜんやめられない。